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2007年06月02日

もう一つのジュンハ物語(21)

「魔女ユヒ」もう一つのジュンハ物語(21)

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魔女ユヒ B side story (Junha story)
  作家 Jasmineyun (on SBS bbs )
  翻訳者 Pado & mimi

Chapter 21.(終章)

結婚式の日が来た。
美容室のスタッフたちは、僕が一人で現れると怪訝そうな顔をしてざわめいた。
花嫁は、いついらっしゃるのでしょう?
と聞かれたので、僕は、連絡が取れないけど、少し遅れるようだね、
と淡々と答えた。
僕があまりにも冷静で完全無欠に振舞っていたせいか、
彼女たちも、どうしたらよいのかわからないようだった。

僕は、あまり時間がかからない簡単な新郎メーキャップを施された後、
一生着ることなどないと思ったタキシードまで着たが、花嫁は来なかった。
式の一時間前になっても、ユヒは、姿を現さなかった。
とうとう、マ会長がサロンにやってきた。
ハアハアと吐く荒い息で、僕が飛ばされそうだった。

「昨日ユヒが私の所に立ち寄って、結婚式を取り消してほしいと言ってきた。」

「そうでしたか。」

マ会長は、全く動揺していない僕の姿に、腹を立てているようだった。

「何だ、その態度はいったい!
足元に火がついて火事になりそうだっていうのに、まったくもう・・・」

「会長様、今、何とおっしゃったんですか?」

「たわけた事を言ってる場合じゃないだろう。
他人事のような顔してたら、取り返しのつかないことになるぞ、
と言ったんだよ。しかし、本当に、本気で来ないとは・・・・」

これで、ユヒが来ないことは、ほとんど確実になった。
僕は、花嫁にすっぽかされた新郎になる確率が圧倒的に高くなった。

マ会長は、僕と一緒に式場へ行くべきかどうか真剣に悩み始めた。

式の始まる50分前、結婚式とその当事者や家族が現れないので、
ホテルから電話がかかってきた。
僕は、マ会長に、僕一人だけでも、結婚式場でユヒを待つと伝えた。
そして、車を運転して、ヒルトンホテルまで来た。

ホテルの駐車場に車を駐車して、新郎控室まで行く道は、
人々の目を意識したせいか、一層、長く感じられた。
僕は、ユヒといっしょにドレスを選んだ日のことを思い出した。
ユヒが最終的に選んだのは、とてもシンプルなデザインで、
あまり装飾がなく、すっきりとした模様の袖なしドレスだった。
そういえば、へジンは、レースがたくさんついた派手なドレスを選んだのだが、
ユヒは、僕に合わせたのか、飾りの少ない無愛想で直線的なドレスを選んだのだった。

しかし、花とリボンの飾りだけのシンプルなドレスでさえ、
ユヒが着ると、まるで天使のように美しかった。

式場の雰囲気は、極度に慌しくなっていた。
僕の携帯電話は、狂ったように鳴り続けていたので、掛けてきた人を
いちいち確認しながら、応対しなければならなかった。

僕の待っている人は、ただ一人だけだった。

結婚式の20分前になると、新郎控室の部屋の前を歩く人々さえいなくなった。
僕は、毒にも薬にもならない父親を結婚式に呼ばなくてよかったと思った。

豪華なシャンデリアに、氷の彫刻、大きな花輪の果てしない行列、
派手に着飾った賀客たち、白いテーブルクロスで飾られた高級な円卓、
結婚式にふさわしいきらびやかさは、すべて意味を失った。
その主人公である花嫁がいないのだから。

しかし、僕は、耳元で続いている慌しい騒音を聞きながら、
結婚式が取り消されるのを待った。
そして、僕の花嫁からの別れの挨拶を待った。

結婚式が予定されていた正午になると、誰も覗かなかった控室のドアがあいて
帽子とサングラスで顔を覆ったユヒが控え目に入って来た。
帽子とサングラスの花嫁の姿だなんて、
あまりにも非現実的すぎて、僕は、思わず笑ってしまった。

これがお前の返事なら、聞きいれなくちゃね。

僕は、彼女にとって全く似つかわしくない姿で現れたものの、
どうしても挨拶ができないで立ちすくんでいるユヒを引き寄せた。
幸いにも、ユヒは僕に怒ってはいなかったようだった。
あの男への僕の態度に対する怒りで固まっているようにも見えなかった。
ユヒはしばらくためらっていたが、ようやく僕に向かって
親しみをこめて腕を差し出してきた。
僕は、向い合ってユヒを抱きしめると、彼女はひとことこう言った。

「幸せになってください。」

僕は、ユヒに、そんな言葉はいえなかった。
これもまた、100%の確信なしでは、決して言えない言葉のように思えた。
僕と一緒に過ごすわけではない、お前の幸せを望むなんて、
嘘じゃなきゃ言えないのではないだろうか。
お前は、僕のことを愛していないから、そんなことが言えるのではないだろうか。

「先輩、本当に長い間、心から好きでした。」

夢から覚めたように、僕は、しばらく控え室に一人、残っていた。
そして、ふと見ると、タキシードの下のシャツの胸倉に
小さい薄い染みがついているのを見つけた。
ユヒが、僕に残した涙の跡だった。

僕がもし、ユヒを愛していたとしたら、
その愛は、小雨みたいな愛だと思った。
今の僕は、他人から見たら、社会的に権威ある心臓外科医ユ・ジュンハかもしれないが、
ユヒから見たら、僕は今でもあの時と同じように、ジュナ先輩でしかないのだろう。

こんなしがない僕のような人間を見つめてくれたということは
ユヒが僕を生かしてくれたという意味ではないかと思った。
そんなユヒの存在が僕にはありがたかった。

たぶん、この長い年月の間、僕たち2人の間に、何の介入や取引などなかったら、
僕たちは、僕が人知れず見た夢のように、小雨のように愛し合ったはずだ。

激しい愛と憎悪の感情が渦巻いたり、激しく泣いたり、
怒鳴ったりるすることのない、静かな愛を育んだはずだ。
世の女性たちが、望んでいるようなロマンスとは、
かなりかけ離れている、そんなささやかな愛に生きたはずだ。


結婚が中止になった後、僕は、中央病院をやめた。
ちょうど、チャン・へジンが、新しい婚約者と結婚する頃だった。

マ会長は、ユヒの愛を絶対に許そうとはしていない、とセラが伝えてきた。
(結婚式で破談にあった僕に、そんな話をして面白がるなんて、
あいつの性格は推して知るべしだ。)

マ会長の系列会社が、次々に、ユヒの会社と取り引きを中止したせいで、
ユヒの会社が大きな打撃を受けた、という噂も聞いた。
しかし、僕は心配していない。
僕の知っているユヒは、背筋をすっと伸ばし、ビジネスライクな目で、
仕事に打ち込むことのできる女性だと思うから。

僕は、次の病院に移るまで、一ヶ月くらい、再充電の時間を持つことにした。

そして僕は、気の向くままに、田舎の村を歩き回ってのんびりした時間を過ごした。
何も考えず、何の目的もない時間を過ごした。
生まれてからこのかた、そんなふうに時間を過ごしたのは初めてのことだった。

旅に出てから三日が経った。

田舎道には似合わない、僕のブルーの愛車は
元々の車体のカラーがわからないほどほこりだらけになっていた。
僕が辿り着いたのは、韓国に戻ってきて、興信所に調べてもらった父親の住所だった。

古い大きな門の中にある木の扉は、僕が大学時代を過ごした
薄汚い部屋よりももっとみすぼらしかった。
人に誇れるものを持たない彼に、
何かを望んでいるかのように訪ねて来た自分自身が
その扉よりもずっとみすぼらしく感じられた。

「やっぱり来るんじゃなかったな。」

もしかしたら、彼と出会ってしまうかもしれない・・・
そう思って慌しく身を翻したとたん、年とった男の声がした。

「ジュンハじゃないのか?」

僕は、その声のする方向に振り向いた。
古い市松模様のシャツと作業ズボンをはいた彼は、
この間会った時に着ていた似合わないスーツ姿より、
ずっと楽そうに見えた。
彼に会っても何と言ってよいのかわからずに、モジモジしている僕に
彼は意外にも明るく笑いながら、話しかけてくれた。
彼の顔を見た記憶さえほとんどない僕だったが
笑いかける顔を見たのは、本当に初めてだった。

「ご飯は、食べたのかい?」

この世の中の大切なものを全て失い、一人捨てられてしまった僕は、
その言葉を聞いたとたん、
子供の頃に戻ったように、涙がとめどなくあふれ出て止まらなくなった。
病院長でもなく、マ会長でもない僕のお父さんが、
泣きじゃくる僕の頭を、やつれた乾いた手で撫でてくれた。

これから幾多の長い歳月が過ぎ去って、僕がまたユヒに会ったら、
その時の僕は、人を愛することのできる人間になっていたいと思う。
そして、何の根拠もないが、
僕は、必ずその日が来ることを信じている。
雨が降れば、必ず彼女のことを思い浮べるように、ごく自然に、
僕は、そうなることを信じている。

(完)

この記事へのコメント
最高です!
このサイドストーリでドラマ作ったほうが
絶対にヒットしたと思います。
mimiさん、ありがとうございます。
ジュンハ先生も、救われたんですね。
しかし、韓国のファンの方のレベルの高さに脱帽です!
Posted by クン子 at 2007年06月02日 20:58
mimiさん、長い間ありがとうございました!
クン子さんの仰る通りこのサイドストーリーの方が
面白かったです(^_^)v
「雨降って地固まる」ですね!
最後にジュンハが人の心を取り戻せて
ヨカッタ、ヨカッタ・・・\(^o^)/
Posted by rico at 2007年06月02日 21:14
サイドストーリーを本当に楽しみにして読んでいました。折り返しあたりでなぜかこのページに行き着けなくなってしまい迷子に・・・。やっとたどり着いて今いっきにラストまで読みました。

ジュンハの屈折した心の彷徨が切なくて引き込まれました。氷のようなジュンハの心も嫌っていた父に会った瞬間溶けていったのですね。(泣)よかった〜。

これでジュンハ先生は人間味溢れる真の名医になる事間違いないです♪

こんな素敵なストーリーを作ってもらえるなんてJHは幸せです。ジェヒのファンから羨まれそう。
Posted by mayochan at 2007年06月02日 22:53
mimiさん、Padoさん本当にご苦労様でした。
そして作家の韓国ファンの方、素晴らしい作品をありがとうございました。
ドラマ以上の素晴らしいstoryです!!

ラストのお話を読み始めてから、ずっと涙が止まらない状態です。
今も、鼻を啜りながらコメント書いてます(;O;)

ジュンハが、最後の最後にやっと自分を探し当てられて、本当に本当に良かったです。
毎回、切ない気持ちで読んでいた私まで救われました。
ユヒと出会いに始まり、一度の別れ、二度目の別れは、屈折した心を浄化する為の試練のようにも感じられました。
自分を見つけて、新たに生きていくその後の彼も見てみたいですね。

私の頭の中で出演していたJHも、演じきって満足気です(笑)
いや〜何度読んでもこんなに泣けるなんて・・若年性更年期かしら??
Posted by ちび at 2007年06月03日 00:06
mimiさん、お久しぶりです。
とうとうBサイドストーリー終わっちゃったのですね・・・。ドラマとは全く違う終盤の展開を素人のファンの方が考えたなんてアッパレです。この作品でドラマが出来たら続きが観たいって思う人続出だと思いました。
このような場を設けて紹介して下さったmimiさんとPadoさんに感謝します。お疲れさまでした。
オンタイム視聴もBサイドストーリーも終わっちゃって寂しくなりました。おまけに某国でものすごくリラックスしてるJHクンの様子を知るたびに、悲喜こもごもの感想が頭の中を駆け巡ったりして・・・。明日から新たな楽しみを見つけようっと。
Posted by GONちゃん at 2007年06月03日 00:41
Professional Skill !!

I have to confess to say this writer( must be real writer) is much much better than the writer of Witch Yee-Hee KDrma .

Delicated description which is more clear and touched than dram series.

KJH's fan are so talented such as Choipt in filming ; Jasmineyun in writing and MIMI San in blog( most important ).

Thank you all *1000....
Posted by Ping at 2007年06月06日 22:21
こんな切ないストーリーは後にも先にもないと思うほどに感動で胸が熱いです。ラストが本当のジュンハの心の琴線に触れられて号泣させていただきました。ほんと良かったです。こんな素敵なストーリーを作って下さりありがとうございました。今度はぜひにも霧の視程距離のサイドストーリーをお願いしたいですね。
Posted by kumin at 2009年03月30日 23:08
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